こころの電話

最近の記事

10月1日~すまない心が ぐいぐいと…

 稔りの秋、食欲の秋となりました。

 さて、先日のニュースで、今年はお米不足が心配されていましたが、食卓にはおいしい新米が届くでしょうか。

 僧侶で、教育者として高名な故・東井義雄先生が著書の中で、「おべんとう」について、生徒の輝雄君の詩を紹介されています。

 けさ 学校に来がけに ちょっとしたことから母と言いあいをした

 ぼくは どうにでもなれと思って 母をぼろくそに言い負かしてやった

 母が困っていた

 そしたら 学校で 昼になって 母の入れてくれた弁当の蓋をあけたら

 ぼくのすきなかつおぶしが パラパラと ふってあった

 おいしそうに におっていた

 それを見たら ぼくは けさのことが思い出されて 後悔した

 母は いまごろ さびしい心で 昼ご飯を食べているだろうかと思うと

 すまない心が ぐいぐい こみあげてきた

 今はすべての学校が給食なので、きっと学校給食が整ってない時代のことでありましょう。

 東井先生は、学校で、弁当の蓋をあけるときの、何とも言えない楽しそうな子どもの顔、蓋の横から何が入っているかのぞきこむようにして、やおら蓋をあける子どもの様子、好きなおかずが入っていたときの輝くような子どもの顔を見ながら、お弁当の時というのは、お母さんとの出会いの時だと思うようになったとおっしゃっています。

 お母さんをぼろくそに言い負かして得意になっている輝雄君のために、さみしい気持ちになりながらも、輝雄君のために大好きなかつお節を振りかけてやらずにはおれないお母さん。

 輝雄君はそのお弁当を通して、その場にはいないお母さんと出会っています。 稔りの秋、手作りのお弁当をいただきたくなりました。

10月1日~すまない心が ぐいぐいと…2024年10月03日【461】

9月16日~まことにありがたく素晴らしいこと

 彼岸花が燃え立つように咲く季節です。

 さて先日、美容室に散髪に行きましたら、髪を切って下さる女性が私に、「『正信偈』ってすべての仏教に共通するお経なんですか」と聞かれました。

 私は、「『お正信偈』は、浄土真宗の教えを開かれた親鸞聖人が書かれたものだから、仏教の宗派すべてではなくて、浄土真宗で拝読するものですよ」と答えました。

 するとまたその女性は、「『正信偈』の一行一行には意味があるのですか」と聞かれたので私は、「そうですよ。一行一行に阿弥陀如来の本願と、その教えを受け継ぎ伝えてくださったお坊さん方のお徳と、私たちが救われる教えがまとめてあるのですよ」と答えました。

 今度は私が、「あなたはなぜ突然に『お正信偈』のことを聞くの」と質問しました。

 すると、その美容室に来るお客の女性が、ご主人が亡くなられたのを機に自宅で『お正信偈』を家族で毎日お勤めされるようになったことを話されたそうで、その女性は「お勤めをするとお供えしている百合の花が揺れて頷いてくれているように見える」とお話しになっていたそうです。

 百合の花の名前は、わずかな風にも揺れるので「揺る」から来ていると言われますが、その女性や家族には、お仏壇の前で『お正信偈』をお勤めするたびに、亡くなられたご主人が頷いているように感じられるのでありましょう。

 しかし、ご家族で毎日『お正信偈』をお勤めされるとはまことにありがたく素晴らしいことであります。

 そしてそのお話が、美容室の女性の心にも響いて、『お正信偈』に少しでも興味を持って下さったこともありがたいことであります。

 美容室で『お正信偈』のお話をしながら、お浄土にお参りになったご主人が仏さまとなって、奥さまやご家族にも、美容室の女性にも、この私にもはたらいてくださっていることを、ありがたく思うことでした。

9月16日~まことにありがたく素晴らしいこと2024年09月14日【460】

9月1日~米一粒も作れず…

 先日の台風十号の後かたづけに追われていましたら、このテレホン法話の変更をすっかり忘れていました。申し訳ありません。

 さて、その台風十号は各地で猛威を振るい、農作物にも大変な被害を与えました。被害に遭われた皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

 台風の被害に加えて、全国的なお米不足が報道されている毎日ですが、今年春に、褒章を受けられた俳優の段田安則さんが、受章のコメントを残されています。

 「米一粒作れず、世間のお役に立っているとは思えない私が紫綬褒章を賜るとは、まさに望外の喜びです」

 また、「俳優はゼロからは何も生み出せません。舞台の上、カメラの前に立たせてくださった方々、一緒に仕事をさせていただいた方々のお力添えに感謝いたします」とおっしゃっています。

 「米一粒も作れず、世間のお役に立っているとは思えない」とは、農業を生業している以外の人は、私も含めて皆そうです。

 身近なところでお米がなくなったとき、はじめてその存在の有り難さに気づきがちですが、このような言葉がすぐさま出るということは、段田さんは常日頃から、その有り難さを心から感じながら生活されているのでありましょう。

 「俳優はゼロからは何も生み出せません」とは、俳優さんもそうですが、それ以外のすべてのお仕事もそうでありましょう。人間は一人では何も行うことはできませんし、一緒にお仕事をしてくださる多くの方々のお陰で、一人ひとりのお仕事も生活も成り立っています。

 多くのいのちと皆さまのおかげによって、私の今日一日が成り立っていることにあらためて感謝したいと思います。と同時に、身近なところから、その多くのご恩に報いていく生活に努めたいと思います。

9月1日~米一粒も作れず…2024年09月04日【459】

[1]    «    1  |  2  |  3  |  4  |  5    »    [154]

- 管理用 -

最近の記事

月別記事