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3月16日~法蔵菩薩様の真似をして

 春に吹く冷たい北風は春北風、別名「はるならい」ともいいます。

 さて先日、鹿児島市の鹿児島別院で、篤信のご門徒Cさんとお会いしたとき、Cさんからニコニコと笑顔で、「いつもテレホン法話を聞いていますよ」と声をかけて頂きました。

 Cさんは軽いごあいさつでおっしゃったのでしょうが、私は何やら少し気恥ずかしく、またうれしく、励まされた気持ちにもなりました。

 仏教に「和顔愛語」という有名な言葉があります。「和顔」はやわらかな顔で人と接し、「愛語」はやさしい言葉で接することで、これは『仏説無量寿経』に出てくる言葉です。

 法蔵菩薩が阿弥陀如来という仏さまになるために修行に励むところで、「表情はやわらかく、言葉はやさしく、相手のこころをくみ取ってよく受け入れて」という意味で出てくるのですが、きっと法蔵菩薩は、悟りを求める自身のためにも、また同時に、多くの人々を仏道に導くためにも、大切な心がけの一つとして励まれたのでありましょう。

 「大きな顔」「浮かない顔」「しかめっ面」「涼しい顔」など顔の表情は様々です。

 「言葉は立ち居を表す」「言葉は身の文」など、言葉の使い方も様々です。

 しかし「言葉は心の使い」と言われるように、自らの日ごろの姿を省みると、言葉も顔も、自分自身のの心の有り様が自然と表れているように思います。

 今月は春のお彼岸です。お彼岸とはこの娑婆の岸からお浄土の岸に至らせて頂く道をたずねる行事です。

 「和顔愛語」、法蔵菩薩様の真似をして、少しずつでもお浄土への道を歩ませていただきたいものです。

 お寺の裏山ではホーホケキョ。「法を聞けよ」と鶯が鳴き始めました。どうぞお彼岸法要にお参りください。

3月16日~法蔵菩薩様の真似をして2025年03月16日【471】

3月1日~「させて頂きます」ということ

 木々が新芽を出す時期を「木の芽時」と言います。ようやくあたたかくなってきました。

 さて、私たちが日常使う言葉に「何々させて頂きます」があります。この言葉について、作家の司馬遼太郎さんがこのようなことをおっしゃっています。一部紹介します。

 『日本語には、させて頂きます、というふしぎな語法がある。この語法は上方から出た。ちかごろは東京弁にも入りこんで、標準語を混乱(?)させている。

 (中略)この語法は、浄土真宗(真宗・門徒・本願寺)の教義上から出たもので、他宗には、思想としても、言い回しとしても無い。

 真宗においては、すべて阿弥陀如来(他力)によって生かしていただいている。三度の食事も、阿弥陀如来のお蔭でおいしくいただき、家族もろとも息災に過ごさせていただき、時にはお寺で本山からの説教師の説教を聞かせていただき、途中、用があって帰らせていただき、夜は九時に寝かせていただく。

 この語法は、絶対他力を想定してしか成立しない。それによって、「お蔭」が成立し、「お蔭」という観念があればこそ、「地下鉄で虎ノ門までゆかせて頂きました」などと言う。相手の銭で乗ったわけではない。自分の足と銭で地下鉄に乗ったのに、「頂きました」などというのは、他力への信仰が存在するためである。最も今は語法だけになっている。(『街道をゆく24近江散歩、奈良散歩』朝日文庫より)』

 司馬さんがおっしゃるとおり、今は語法だけ、形だけが残ってしまったことは残念なことですが、私の今日一日の一つ一つがアタリマエ、アタリマエではなく、阿弥陀如来の大いなるはたらきによって支えられている、生かされている、おかげのなかにあるという実感が、「させて頂きます」という言葉の中にあるということを、今一度ふり返りたいと思います。

 今月は春のお彼岸です。ぜひお寺にお参りください。

3月1日~「させて頂きます」ということ2025年03月01日【470】

2月16日~小さいことを重ねる大切さ

 春には、淡いという言葉がよく似合います。ほのかにかすむ感じ、美しい余韻を感じる言葉です。

 さて、先月一月二十一日、米国の野球殿堂は今年の殿堂入りの表彰者を発表し、イチローさんがアジア人で初めて選出されました。

 プロ野球・オリックスから、二〇〇〇年のオフに大リーグ・マリナーズに移籍し、二〇〇一年から十年連続で二百安打を記録、同時にゴールドクラブ賞を十年連続で獲得、大リーグ通算十九年で三〇八九安打を記録し、走攻守そろった外野手として、その功績が認められたものであります。

 その功績を讃える新聞記事で、イチローさんの言葉が一つ紹介されていました。

 「小さいことを重ねることが、とんでもないところに行くただ一つの道だ」

 その記事には、現役時代では普段の生活から全身の筋肉を意識しながら生活をしていたとありましたが、この言葉の通り、日々の厳しい練習はもとより食事や睡眠、休養の取り方など、計り知れないほどの努力を積み重ねてこられたのだろうと察することです。

 仏教には「精進」という言葉がありますが、これは「雑念を去って、仏道修行に専心する」ということですが、それが「目標に向かって怠ることなく一途に取り組んでその道を究める」という意味で広く使われるようになりましたが、イチローさんの「小さいことを積み重ねること」という言葉から、同様の意味が感じられます。

 またこの「精進」の元のインドの言葉は、virya(ヴィーリヤ)の訳語で、本来は「剛健」「勇者」「勇敢さ」という意味であり、一心に仏道修行を歩むものには、勇者のような気概を持ってたゆまず努め励む姿が理想であり、これも現役時代のイチローさんのその姿勢から感じられることです。

 この「精進」は元来雑念を去って、仏道修行に専心することです。浄土真宗の唯一の修行といえば仏法聴聞です。仏さまのみ教えを重ねて聞き続けることが、お浄土に参らせていただくただ一つの道です。来月は春のお彼岸です。ぜひお寺にお参りください。

2月16日~小さいことを重ねる大切さ2025年02月16日【469】

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