7月1日~自分の力では困難なこと
七月二日は半夏生、もう一年の折り返し地点です。
さて、先月十九日の南日本新聞に、翌二十日の鹿児島県知事選告知を前に、選挙管理委員会が啓発ポスターを作成したとの記事が掲載されました。
その内容は、「こんな知事には県の運営を任せてはおけない」というユーモアを交えた架空の四人の知事が掲載されており、一つは柴犬の「犬知事」、寒いギャグを連発する「おやじギャグ知事」、実在するかも怪しい「バーチャル知事」、そして何かと人任せの「他力本願知事」という計四人が掲載されていました。
新聞記事によると、投票率が低い傾向にあって、若い方々に選挙に関心を持ってもらうことを願って、また有権者に選挙を自分事としてとらえてもらうために作られたポスターでした。
それに対し、本願寺鹿児島別院と鹿児島の浄土真宗六派で構成される真宗教団連合鹿児島支部より抗議文が提出されました。
それは、「他力本願」という浄土真宗でもっとも大切にされる言葉が誤った意味で使用されていたからです。
「他力本願」というと時折、「もっぱら他人の力をあてにする、他人まかせ」という意味で使われ、今回も人任せ知事として同様の意味で用いられていますが、これは大変な誤用だからです。
他力とは阿弥陀如来の本願のはたらきであり、他力本願は阿弥陀如来より、私たち一人ひとりに向けられた救いの力であります。
私たちの心は、怒りや腹立ちやねたみそねみ、また驕り高ぶりが常にまん延して、自分の力で悟りの道に向かうことはとても困難なことです。
そのような私たちに、「この阿弥陀仏にまかせよ、わが名・南無阿弥陀仏を称えよ、必ず浄土に生まれさせて仏にならしめん」と向けられた真実の願いを阿弥陀如来の本願と言います。
本願寺からの抗議を理解してくださり、すぐさま適切な対応をしてくださった県の選管様には感謝とともに敬意を示したいと思います。
共々に「他力本願」のお言葉を正しく聞き開いて参りましょう。
2024年07月01日【455】