6月1日~一人ひとりの病状に応じて
太陽の日差しが一段と眩しい季節になりました。
さて、今から約二五〇〇年前に、お釈迦様によって仏教は開かれました。そのお釈迦様のお説法の特徴は、「応病与薬」と言われ、一人ひとりの悩み苦しみに応じて、薬を与えるように教えを説かれたということです。
現代において、薬は、医師の診察の下で出される「処方薬」と薬局で薬剤師に相談して選ぶ「市販薬」を合わせると、約二万五〇〇〇品目におよぶと言われます。それに伴って、私たちは容易に薬が手に入るようになりました。そして今では、不治の病とも言われていた癌でさえも、治る可能性が生まれています。一人ひとりの病状に応じて、有難いことに多くの薬が完成しています。
それと同じように、お釈迦様は、私たち一人ひとりの悩み苦しみに応じて、救いの教えをお説きになったのです。
この世で生きる私たち人間の悩みや苦しみは、子育てや経済的な問題、人間関係やお仕事など様々です。まして、老病死から逃れることのできない私たちは、その恐れや悩みから逃れることはできません。
顧みれば、この世に生を受けた瞬間から、老病死をかかえた私たち人間の悩みは、お釈迦様がいらした二五〇〇年前と、何も変わりはありません。
さらに、感染症拡大に悩まされ、世界の各地で紛争は起こり、さらに将来の地球環境までもが心配され、人々の悩み苦しみは深まるばかりです。
どのように時代が変わっても、私たち人間は、悩みや苦しみと向き合わねばなりません。しかし、お釈迦様は、遠い昔より、その人間の持つ苦悩の原因を見通して、私たち一人ひとりが悟りの道へと歩む教えを示してくださいました。
私の苦しみが深いゆえに、仏の慈悲に限りがない。
私の迷いが深いゆえに仏の智慧に限りがない。
そのおいわれを、正しく聞いてまいりましょう。
2024年06月01日【453】