10月16日~お婆ちゃんは行けないじゃない
新米を仏前にお供えしました。豊の秋です。
さて前回、中秋の名月にちなんで、とんちで有名な一休さんと本願寺八代のご門主・蓮如さんのお話をしましたら、ご門徒からおもしろかったとお声をいただきましたので、今回も続いて。
一休さんが、蓮如さんにまたまた歌で問いかけました。
「極楽は 十万億土と説くならば 足腰立たぬ婆は行けまじ」
『阿弥陀経』というお経に、阿弥陀如来の極楽浄土は私たちの世界より西に十万億土離れたところにあると説かれているところに一休さん着目し、そんな遠いところであれば、足腰の立たないお婆ちゃんは行けないじゃない、と問いかけているのです。
十人に一人が八十歳以上と言われる高齢化の日本、ほとんどの人が行けません。いや、十万億土ですから若い人でもきっとたどり着けません。
それに対し蓮如さんは、歌で応えました。
「極楽は十万億土と説くなれど 近道すれば南無の一声」
確かにお経にはそう説いてはあるけど、その遠いお浄土にこちらから汗水流して行くのではありませんよ。お浄土は、南無阿弥陀仏とお念仏を申す人のところには、お浄土の主である阿弥陀さまがいつもご一緒してくださっているのですよ、と応えられました。
極楽浄土は私たちを救わんとする真実の世界であり、その真実のはたらきが私たちの目に見えるようにお姿になって現れてくださったのが、阿弥陀如来という仏さまです。
「わが名を称えよ、必ず救う」が阿弥陀如来の願いですから、私が南無阿弥陀仏と念仏申すところに、その真実のはたらきが届いているのであり、それを「近道すれば南無の一声」と言われているのです。
大切なことは弥陀の願いに素直に頷くこと。それを蓮如さんは「近道すれば」とおっしゃいました。
2023年10月24日【438】