1月15日~ 荒れる日本、省みるは…
年が明けていっそう寒さがましてきました。
さて、新年早々、兄が妹を、妻が夫をバラバラにと、耳を疑いたくなるような事件が多発しています。残忍と言うより猟奇的と言う方がふさわしい残念な年明けです。
一方お寺では、このようなことがありました。
昨年十二月にお母さまを亡くされたNさんが、年末にお寺に来られたおり、「ちょうど元旦が母の二七日です。お正月ということもあって、親せき皆でお寺で法事を勤め、その後、会食をします。でも、ご法事で精進料理をせねばと思うし、一方ではお正月ということでご馳走をと思うし、どうしたらよいでしょう」という質問をされました。
Nさんの家族・親せきは、昔からご法事を大切に勤められます。ご法事に精進料理をするのは、大切な家族の命を失ったことを悲しみ、せめてその日だけは、人間と同じ命を持つ動物の命を殺め食することを控えるという、仏教徒の尊い謹みの行為です。
Nさんは、お母さまのご法事に精進をしなければ、でも、お正月にしか会えない親せきが集まるから懇親やおもてなしの意味もあって…と、悩んでおられるのです。
私は、最初に簡単な精進料理を頂いて、その後に、お正月のご馳走を頂くように。大切なことは、お母さまのご法事の意味と、尊い精進の心を、子どもたちや孫たちに確かに伝えることですから…とお答えしましたが、同時に、このNさんが、お母さまのご法事一つひとつを大切に勤めようという姿勢がすばらしいと思いました。
Nさんは、毎週のご法事を一日送らせて日曜日に設定し、そこには中学生、高校生の子どもたちがたくさんお参りし、手を合わせます。お勤めが終わると、皆元気な声で「有り難うございました」と深々とお礼を申されます。
このご家族一同の姿を見て、ここには、骨肉の争いをするような夫婦、兄弟、親子は決して生まれないと固く思います。
今、荒れる日本が省みねばならないのは、このような感謝の生活の有り様です。
2007年01月15日【40】